日本の文化として、置き家具をお部屋に取り入れるということは、実はそこまで歴史が古いわけではありません。
元来、日本の文化において、家具を部屋に置くという風習はありませんでした。
江戸時代に日本に訪れた外国人達は一応にその質素な暮らしぶりに驚いたと言います。
その時代、箱膳(はこぜん)は食器棚とテーブルを兼用し、椅子に座らず畳の上で食事をしていました。畳は椅子の代わりのクッション性のある床としてのみではなく、その上に布団を敷いてベッドの代わりにもなっていました。
戦後、昭和の時代は家族全員が一間のテレビのある部屋で食事をし、夜になればちゃぶ台を折りたたみ、押し入れから布団を出して居間に敷き、そこがそのまま寝室になる、というような家庭が数多く存在していました。
欧米人からウサギ小屋と形容されるような狭いスペースを有効に活用するためには、部屋も家具も、様々な機能を兼用する必要性があったのです。
正確には家具が全くないというわけでもなく、箪笥や食器棚などを置きそれらに必要なものを収納していくという方法をとっていましたが、西欧と比べると「なにもない」と言われても仕方がない家具の少なさだったでしょう。
時は変わって現代。
インテリアという概念が一般的になり、収納するという目的だけでなく、その見た目、デザインなど形を重要視する時代となって、北欧風、アメリカン、アジアンテイストなど、様々な文化を実生活に取り入れようとする試みが多くみられるようになってきました。
畳中心の生活からフローリングへ
火事が頻発し、大八車で家財道具すべてを載せて避難しなければならない時代ではありませんし、自分がより自分らしく生活するためには好きな物に囲まれ、便利に暮らしやすくお部屋をコーディネートすることもまた楽しみのひとつとなりました。
ここにひとつ、チェストをご紹介いたします。
CA-0013 チェストです。
こちらのチェストはデザイン的に少し変わっているかもしれませんが、正倉院の校倉造り(あぜくらづくり)をモチーフにしたデザインで、日本人のDNAに訴えかけてくる心地よさがあります。
その組木の美しさは、引き出しの境目が分からない程、デザインとしても洗練されたものとなっています。
引き出しを引くとこのように、前板と側板の格子がほどけて引き出されます。
デザインは古代日本、チェストという置き家具の機能性は西洋、時代と空間、文化を超越し、融合された家具をお部屋に置くというアイデアは、またひとつ、家具を選ぶ基準としてとても面白いアプローチとなるのではないでしょうか。