直して、受け継ぎ、継がれる家具。

BRUNCHで家具をお選びになるお客様から

「無垢の木の家具って、大体どれくらい使えますか?」

というようなご質問を受けることがあります。

 

語弊を恐れずに言い切ってしまいますと、
「人間の一生、以上は使えます」
というのが答えとなります。

使用頻度や扱い方などによって部材の寿命というものは変わりますし、また、燃えてしまっては直すことは難しいのですが、通常の使用によって直せないほど壊れることは少ないでしょう。

つまり、壊れても直せる、ということがポイントとなります。

(もちろん、年代物で現在では入手が難しいパーツや材料の場合は全く元通りというわけにもいかず、代替えで対応する他ない場合もあります)

まず、モノが壊れる状況は様々ですが、一概に言って、その家具を構成するパーツや部品の点数が多い分だけ、壊れる可能性は高くなります。逆にいえば、シンプルな家具ほど壊れにくい、と言えそうです。

家具が壊れる例として、例えば、テーブルの脚を固定する金具が折れ曲がる、引き出しのスライドレールが破損し、動きが悪くなる、椅子の脚そのものが折れる。

ある家具を家具として使えない以上、「壊れた」と言えますが、破損の状態にはよるものの、破損部分を取り替えたりすると直せることがほとんどです。

上記でいえば、固定金具を交換、スライドレールを交換、折れている脚のパーツを新しい脚と組み直し交換する、などです。

テーブルの場合、特に一枚板テーブルなどが分かりやすいですが、一枚板天板を脚に固定せず、置くタイプの鉄脚などをお選びいただいた場合、天板の板と脚のみの部品構成となり、もともと固定していないので、天板と脚の接合部分の故障はなくなります。また、脚がグラつき壊れたとしても、脚を別のものに取り替えてしまえば、テーブルとして問題なく使い続けられます。

天板と固定しなくても使える安定した鉄脚
脚部分のみ、再製作し天板を乗せれば、まだまだ使えます

天板自体が傷つき、日焼けし、汚れてしまっても、また、湿度や気温等の影響で割れが発生してしまったとしても、削ったり、張ったり埋めたりして直せてしまうので、こんなケースでももちろん、問題なく使い続けられます。

ウォールナット三枚接ぎ天板の補修、メンテナンスをみてみましょう。

かなり年季の入ったウォールナット天板
ご使用中についた家族の歴史とも言えるシミや傷の数々
こちら側には傷やシミの他に、割れも!
接ぎ目(はぎめ)から割れが発生し3mmほどの隙間があいています
そんな時には、これ
契り(チギリ)と呼ばれるパーツで割れを固定し、隙間は埋めます
ひたすら削り、削り、削り、契りで割れを留めて、
オイルを塗れば、見違えるほど、綺麗に。
契りの部分も味わい深く。こんな補修は無垢のテーブルならでは。
メンテナンス後には今まで見えなかった木目もくっきり

「一生使える」という意味は、
新品の状態のまま、ずっと壊れずに使えますという意味ではなく、
適宜パーツを取り替え補いつつ、メンテナンスし直しながら
使っていけます、という意味になります。

欧州などでは、家を出る若い世代に家の椅子を譲るという風習もあり、
その都度、修理して受け継いでいきます。何世代も受け継いでいく家具は
オリジナルの部材の方が少なくなる場合もあります。

次の世代まで受け継いでいくことができるというのは、
無垢の木の家具の素晴らしさのひとつといえるでしょう。