ダイニングテーブルの脚が付けられている位置について、注目したことはあるでしょうか。
実はテーブルの脚の位置は、デザインだけの問題で決められているのではないのです。
それをご説明するために、まずはこちらの写真をご覧ください。
違いがお分かりになりますでしょうか。
四本脚、ということは変わらないのですが、よく見ると①の方が②のテーブルの脚に比べ、天板の内側に付いていますね。
①の方の脚は天板の端から約5mm中に入ったところに付けられているのですが、何故天板の端ピッタリに付けていないのか、不思議に思われませんか?
実はこの脚の取り付け位置には、木の性質が関わっているのです。
まずは、木という素材の特性についてお話しします。
木材は組織内に水分を含有する素材です。
この、木材に含まれる水分量(『含水率』といいます)は、木材が「呼吸」することによって変化します。木は伐採された後でも、周囲の温度や湿度に合わせて空気中の水分を吸ったり吐いたりして、湿度の調整をしています。
つまり、周囲が乾燥している時は木の中の水分を吐き出すことにより収縮し、逆に湿度が高い時は、余分な湿気を吸収して膨張するのです。
ちなみに、この特性によって起きてしまう代表的な事象が、反り・割れです。
無垢材家具は、空気がとても乾燥した場所に置いておくと反りや割れが起こる事が稀にありますが、それもこの木の収縮が起きてしまった事が原因です。そこで、空気の乾燥が進む秋口~冬の間は、木の家具が置いてあるお部屋には、ご自身の喉が痛くならない程度に加湿器をつけて頂く事をお勧めしています。
少し話が逸れましたが、この木が持つ特性ゆえに、①の脚は少し中に入った位置に取り付けられているのです。
例えば湿度の変化により脚が膨張を起こしてしまったとして、もし最初から脚が天板の端にピッタリに付けられていたらどうでしょう?
天板より外側に脚が飛び出してしまう事になり、不格好になってしまいますよね。
つまり、①の脚は、多少膨張を起こしても見た目におかしくならないように、あえて少し内側に付けられているのです。
ではここで、皆様が疑問に思われるだろうポイント、②は何故天板の端とほぼピッタリの位置に付けられているのか、という点についてお話しします。
膨張してしまうという木の特性は変えられない。しかし、デザインに一工夫加えることで、例え膨張が起きてしまっても目立たなくする、ということは可能なのです。
もう一度、②の脚の付いているところを見てみて下さい。
天板と接地している部分に、スリットが入っていますよね。実はここが大きなポイントなのです。写真に少し手を加え、脚を少し膨張させてみましょう。
①のようなタイプ(スリット無し)の脚だと、少しでも天板から飛び出ただけでかなり目立ってしまうのですが、天板と脚の間に隙間が出来る事で、脚が多少膨らんでしまっても直接段差にならないため視覚的にごまかされ、①ほど気にならなくなるのです。
また、スリットは陰影を強調することで直線的な印象を際立たせる効果もあるので、まさに一石二鳥の役割を担ってくれています。
今回はテーブルの脚の取付け位置から、膨張・収縮という木の特性についてお話させて頂きました。
木の家具は、お部屋の湿度を調整し、快適な空間づくりに一役買ってくれるアイテムです。しかし、膨張・収縮、経年変化など、木材特有の様々な性質を切り離して考える事はできません。木の特性を理解し、上手につきあっていきたいですね!