日々の暮らしにおいて、もっとも身近な家具のひとつ「ダイニングテーブル」。
素材やデザインに目がいきますが、今回は普段はあまり気にされないテーブルの裏側に注目してみたいと思います。
●反り止めとは?
テーブルの裏には主に2つのものがあります。
ひとつは「幕板」、そしてもうひとつが今回の話の中心となる「反り止め」です。
どちらもテーブルの構造上、非常に重要な役割を担っています。
こちらが「幕板」。
天板の下に枠を組み固定します。
幕板の主な役割は「強度を持たせる」「反り止めの役割を果たす」ことにあり、脚の取り付け部も兼ねています。
幕板の詳細については以前に紹介しましたので、こちらをご覧ください。
こちらが「反り止め」。
名前からして「テーブルの反りを防ぐためのもの」ということは察しがつくと思いますが、普段はあまり意識されない位置にあるためか、ピンとこない方もいらっしゃるかもしれません。
ただよく見ると、無垢材のテーブルの多くには、形状は違えど反り止めがついています。
ではなぜ無垢材のテーブルには反り止めが必要なのか、まずはその理由を簡単に説明します。
●無垢材はなぜ反る?
無垢材には周辺の湿度を一定に保とうとする調湿作用が備わっており、
湿度の高い梅雨の時期は大気中の水分を吸い込むことで湿度を下げ、乾燥する冬の時期は水分を吐き出すことで湿度を高めてくれます。
天然の除湿器・加湿器といったところですね。
また、木はそれぞれに違う役割を担うさまざまな細胞によって構成されており、方向(場所)によって性質が大きく異なります。これを「異方性」と呼び、異方性を持つ無垢材は、膨張・収縮率が方向(場所)により異なります。
これにより「反り・ねじれ」といった症状が出ることがあるため、無垢材のテーブルの多くには反り止めを取り付けています。
では、反り止めがあれば絶対に「反らない・ねじれない」かと言われれば、無垢材の動く力はそれ以上のため、反り止めが入っていても反ることがありますが、反り止めがなければもっとひどい状態になってしまうため、一般的な無垢材のテーブルには、補助の役割として反り止めや幕板が必要となります。(反りや割れの可能性を下げるためには、下準備としての乾燥が最も重要な役割を果たします。それはまた別の機会で)
●反り止めの種類
さて、この反り止めにはいくつかの種類があり、木製とステンレス製が一般的です。
こちらは木製の反り止め。木ネジで固定しています。
こちらも木製の反り止め。
「蟻桟」という技法で、木の摩擦のみで反り止めを取り付けています。
天板裏に蟻溝と呼ばれる台形型に溝を掘り、対の形をした桟を横から滑りこませていきます。
手前から少しずつ溝の幅を細くしていき、桟を叩いて入れることでしっかりと止めることができます。
緩くてもきつくてもいけない、職人の技術の見せどころです。
横から見るとこんな感じです。
蟻桟は木ネジ・ボンドなど固定するものがないため、無垢材が動こうとする力をうまく受け流しながら反り止めの役割を果たしてくれます。
無垢材にとっては一番合理的な方法と言えるかもしれません。
こちらはステンレス製。
こちらもステンレス製。
木に比べて出っ張ることがあまりなく、たとえばアームチェアの出し入れや足を組んだりする場合に非常に有効です。
ちなみに無垢材の収縮率は繊維(長さ)方向にはほとんど縮まらず、テーブルの場合は奥行きにあたる放射(柾目)と接線(板目)方向に縮みます。
もちろん樹種による差はあるものの、その割合は繊維0.5~1:放射5:接線10と言われています。
そのため、反り止めはテーブルの奥行き方向に付ける必要があり、少しあそびをもたせてあげることが重要です。
反り止めと同じ幅の溝にしてしまうと無垢材が収縮する際にぶつかってしまい、余計に負担が掛かってしまいます。
そのため溝にも反り止めを止めている木ネジの穴にもあそびを持たせています。
また木製の反り止めの場合は、写真のように天板と反り止めの木目が垂直になるように取り付けます。
これは反り止めも木製である以上、天板と同じように反りやねじれが生じてしまうため、もっとも変形の少ない繊維方向を使用するためです。
一枚板の場合は天板に厚みを持たせることで反り止めを付けていないケースが多いですが、それ以外のテーブルには幕板や反り止めがついているはずです。ぜひテーブルの裏側にも注目してみてください。
普段はあまり気にしない場所にある、まさに縁の下の力持ちといった存在が「反り止め」です。